労災事故 事故状況別:仕事中・通勤中の交通事故

1 交通事故で正当な補償を受け取るために

仕事中や通勤中の交通事故によって、

  • 働くことができなくなってしまった場合
  • 身体に後遺障害(後遺症)が残ってしまった場合
  • 大切なご家族を亡くされてしまった場合

等には、ご自身やご家族の生活を守るためにも、適切な補償を受け取ることが必要不可欠であるはずです。

このような場合に、正当な補償を受けるためには、大きく、

  • 加害者(の保険会社)に対する請求
  • 労災の請求(申請)

の2つの方法が考えられます。

いずれの方法にも一長一短がありますので、どのような形で請求を行うかについては、ご自身の状況に応じた検討が必要です。

このページでは、仕事中・通勤中に交通事故に遭ってしまった場合の、それぞれの請求方法の内容について、詳しくご説明していきます。

2 加害者(の保険会社)に対する請求

(1)請求の流れ

交通事故に遭ってしまった被害者は、加害者側の加入している任意保険会社から医療費の支払いを受けながら、入院や通院による治療を続けることが通常です。

治療が終了した後、身体に後遺障害(後遺症)が残ってしまった場合には、損害保険料率算出機構という機関から、その障害が後遺障害等級1級~14級の第何級に該当するのか(またはどの等級にも該当しないのか)の認定を受けることになります。

等級の認定を受ける手続きには、加害者側の任意保険会社に手続きをとってもらう方法と、被害者側で直接の請求を行う方法があります。被害者側の直接の請求は、弁護士に依頼して行うこともできます。

最終的には、後遺障害等級の認定結果を前提に、加害者(の任意保険会社)に対して、発生した全ての損害(休業損害、慰謝料、逸失利益など)の賠償を請求し、適切な金額の支払いを受けることによって、被害者への補償が図られます。

もっとも、これらは大まかな説明にすぎませんので、加害者側の保険会社との関係でお悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。

特に、後述の弁護士費用特約を利用できる場合には、費用のご負担なく弁護士に依頼をすることができます。

(2)加害者(の保険会社)に請求する利点

ア 損害の全額を請求することができる

被害者は、加害者に対して、発生した損害全額の賠償を請求することができます。多くの場合、加害者本人に代わって、加害者側が加入している保険会社から、損害全額分の賠償金の支払いを受けることになります。

他方、労災の請求では、発生した損害全額についての補償を受けることはできません。労災保険からは、慰謝料が全く支給されませんし、休職したことによる減収についても、全額の補償を受け取ることはできません。

このため、労災の請求を行った場合でも、労災保険から支給を受けられない損害(=慰謝料、補償されない減収額、逸失利益等その他の不足額)については、あらためて加害者側に請求を行う必要があります。

これに対して、加害者側に損害賠償を請求する場合には、慰謝料などを含めた損害全額の支払いを、一括して求めることができるという利点があります。

イ 費用の負担なく弁護士に依頼できる場合がある

昨今では、皆さまが加入している自動車保険等の保険に、「弁護士費用特約」(=交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼する際に、保険会社が弁護士費用を支払ってくれる特約)が付いている割合が増加しています。

このため、交通事故に遭われた方々が、ご自身やご家族、あるいは勤務先の会社が加入している保険から、弁護士費用特約を利用できることが多くあります。

弁護士費用特約を利用できる場合には、保険会社が、弁護士に損害賠償請求を依頼するための費用を支払ってくれますので、依頼者様の費用負担が0円で済むという利点があります。

弁護士費用特約については、この特約を利用できることのご認識がない方々も多くいらっしゃいますので、ぜひご自身やご家族、及び勤務する会社の保険関係をご確認されることをお勧めします。

ただし、気を付けなければならないのは、保険会社が支払ってくれる弁護士費用は、保険会社の支払基準の範囲内にとどまるという点です。

このため、保険会社の支払基準を超える弁護士費用を設定している法律事務所からは、差額の費用の支払いを求められる可能性がありますので、依頼しようとする弁護士に、事前に確認しておくことが重要です。

なお、当事務所は、弁護士費用特約をご利用できる依頼者様に対して、保険会社の支払基準に沿った弁護士費用を設定しており、差額のお支払いが発生することはありませんので、安心してご依頼をいただけます。

(3)加害者(の保険会社)に請求する注意点

交通事故の治療が終了した後は、被害者の方々から請求を行うまでもなく、加害者側の任意保険会社の方から、賠償金額が記載された示談案を提示してくることが通常です。

注意しなければならないのは、保険会社からの提示額は、弁護士に依頼することによって、増額できるケースが非常に多いということです(これは、弁護士と保険会社とでは、損害賠償額の計算に用いる基準が異なるためです)。

事案によって、示談金額が非常に大きく上昇する場合もありますので、保険会社から示談案を提示された際には、そのまま示談に応じてしまう前に、交通事故に詳しい弁護士に、提示額が妥当なものであるかどうかを確認してもらうことを強くお勧めします

なお、交通事故と労災事故は、人の負傷や死亡に対する損害額を算定し、その賠償を請求するという点で、必要となる知識や能力に多くの共通点があります。

当事務所の代表弁護士は、交通事故事件にも豊富な経験と実績を有しておりますので、安心してご相談をいただけます。

3 労災の請求(申請)

(1)請求の流れ

仕事中や通勤中に交通事故に遭われた労働者の方々は、労災の請求(申請)を行うこともできます。

具体的には、医療費については「療養(補償)給付」の請求を、休職による減収については「休業(補償)給付」の請求を、治療後に後遺障害が残ってしまった場合には「障害(補償)給付」の請求を、それぞれ行うことができます。

労働者ご本人が亡くなってしまった場合には、ご遺族が、「遺族(補償)給付」や「葬祭料(葬祭給付)」の請求を行うことができます。

これらの請求先となるのは、いずれも労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長です(ただし、労災保険指定医療機関で治療を受けている場合の「療養(補償)給付」については、治療を受けている病院に労災請求用紙を提出します)。

他方、気を付けなければならないのは、労災保険からは、被害の全額についての補償を受け取ることはできないということです。

労災保険から支給を受けられない損害(=慰謝料、補償されない減収額、逸失利益等その他の不足額)については、別途、加害者(の保険会社)に対して請求を行う必要があります。

(2)労災請求(申請)の利点

ア 任意保険会社の有無や対応に左右されない

加害者が任意保険に加入していない場合は、任意保険会社から治療費などの支払いを受けることはできません。強制保険である自賠責保険には支払いの限度額がありますし、加害者本人から支払ってもらうことにも困難を伴います。

また、加害者が任意保険に加入していても、任意保険会社がこちら側の過失が大きいと判断した場合には、治療費などの支払いを行ってこないこともあり得ます。

一方、労災保険は、被災した労働者の保護を目的とした制度ですので、被害者に過失がある場合でも支給を受けることができます。

このように、労災を請求することには、加害者側の任意保険会社の有無や対応に左右されることなく、迅速に治療費などの支払いを受けられるという利点があります。

イ 特別支給金を受けることができる

労災の請求(申請)には、本来の損害賠償金に加えて、社会復帰促進等事業に基づく「特別支給金」を受け取ることができるという利点もあります。

例えば、事故による怪我で休職した場合に受けられる、労災保険の「休業(補償)給付」の金額は、休業1日につき、「給付基礎日額」の80%(=労災保険給付として60%+特別支給金として20%)です。

「給付基礎日額」とは、労災事故の直前3か月間分の賃金総額(ボーナスを除きます)を暦日数で割った金額をいいます。簡単に言うと、賃金を日割り計算した日給のことです。

この場合、労災保険から支給されない不足額を受け取るためには、加害者に対して損害賠償を請求することが必要です。

そして、普通に考えれば、加害者に請求できる休職についての不足額は、休業1日につき、「給付基礎日額」の残り20%となるはずです。

しかし、実際の制度では、加害者に対して、休業1日につき、「給付基礎日額」の40%を請求することができます(これは、特別支給金が、社会復帰促進等事業により福祉の増進を図るために行われる給付であるため、損益相殺の対象とならないことが理由ですが、やや専門的な事柄ですので詳細は割愛します)。

つまり、労災請求を行った被害者は、休業1日につき、「給付基礎日額」の100%の金額(=労災保険給付60%+加害者からの損害賠償金40%)に加えて、20%の特別支給金も受けられることになります。

このように、労災の請求には、損害の賠償分とは別に、特別支給金を受けられるという利点があります。

ウ 有利な後遺障害等級を得られる場合がある

労災保険から支給される給付額や、加害者に請求することができる損害賠償金の相場は、認定された後遺障害等級の重さに応じて決まります。

労災の後遺障害等級は、障害の程度に応じて、第1級から第14級に分類されています(第1級が最も重く、第14級が最も軽いです)。

また、交通事故(自賠責保険)の後遺障害等級も、労災の後遺障害等級に準拠しており、同様に第1級から第14級に分類されています。

もっとも、労災の後遺障害等級は、労働基準監督署が認定するのに対して、交通事故(自賠責保険)の後遺障害等級は、損害保険料率算出機構という機関が認定するという点で違いがあります。

そして、一般的には、労災の等級認定の方が、交通事故(自賠責保険)の等級認定よりも、被害者に有利な認定がされやすい傾向にあると思われます。   

このことは、交通事故(自賠責保険)の手続きで低い後遺障害等級が認定されてしまった場合でも、労災の請求を行うことによって、労働基準監督署から、それよりも高い後遺障害等級の認定を受けられる可能性があることを意味します。

このため、労災の後遺障害等級の認定を受けておくことが、加害者に対する損害賠償請求で役立つ場合があり、このことも労災請求を行う利点の一つと言えます。

(3)労災請求(申請)の注意点

交通事故で労災の請求(申請)を行う場合には、労働基準監督署に対して、第三者行為災害の届出を行う必要があります。

なお、交通事故の労災請求では、労働基準監督署から、加害者(の保険会社)への請求を優先させるよう勧められることがあります。

これは、労基署の職員が行政通達に従って行動しているためですが、被害者に強制できるものではありませんので、このような場合であっても、労災の請求を行うことは可能です(窓口などで、労災を請求することをはっきりと伝えましょう)。

4 交通事故のご相談をご検討されている皆さまへ

以上のように、①加害者(の保険会社)に対する請求と、②労災の請求(申請)には、それぞれ一長一短があります。

どのような形で請求を行うかについては、被害者の方々が置かれた状況(=過失の有無、弁護士費用特約の有無、加害者の任意保険会社の有無など)や、解決に向けて何を重視するかのご希望(=金額、時間、弁護士費用など)を踏まえた検討が必要です。

当事務所は、依頼者様にとっての最良の請求方法をともに考え、交通事故の被害に遭われた皆さまが、正当な補償を受けられるよう全力を尽くします。

お悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。

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