就職前に脳梗塞で2回の入院歴があったバス運転手が、就職後に脳出血を発症⇒労災認定(後遺障害等級1級)と会社から4200万円の解決金を獲得した事件
1 ご依頼の内容
労災の請求(申請)と、勤務先会社に対する損害賠償請求をご依頼いただきました(本件は、他事務所の弁護士と共同受任し、当事務所の代表弁護士が主任弁護士を務めました)。
2 事案の概要
ご依頼者(50代男性)は、北海道内の会社にバス運転手として就職しました。
しかし、就職から約1年4か月後に、重篤な脳出血を発症し、左半身麻痺と高次脳機能の障害を負うこととなりました。
ご相談をお聞きすると、ご依頼者の労働時間は相当な長時間に及んでおり、勤務先会社での過重労働が原因で、脳出血を発症したことが疑われました。
しかし、ご依頼者にとって非常に不利なことに、ご依頼者には、就職の前に、脳梗塞で2回の入院歴がありました。
このため、勤務先会社は、ご依頼者の脳出血の発症は、仕事が原因ではなく、ご依頼者の病歴が原因であるとして、会社の責任を全面的に否定していました(また、ご依頼者の過重労働も認めませんでした)。
このように、本件は、労働災害の中でも難易度の高い脳疾患の事件であることに加えて、ご依頼者に、就職前に2回にわたる脳疾患での入院歴があったことから、弁護士にとって非常に高難度と言える事件でした。
3 労災の請求(申請)
まず、管轄の労働基準監督署に、脳出血の発症についての労災請求(申請)を行いました。
脳出血をはじめとする脳・心臓疾患が労災認定されるためには、労働者の時間外労働時間が、①いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる長時間労働の水準に達するか、②少なくともこれに近い労働時間であると認められることが必要です。
このことから、労災の認定を得るためには、労働基準監督署に対して、積極的に長時間労働の事実を証明していくことが重要になります。
本件では、ご依頼者の労働時間に関する資料として、勤務先会社が作成した勤怠表がありましたが、労働の正確な実態が反映されておらず、これに基づいて計算した労働時間は、労災と認められる水準に達していませんでした。
このため、当方は、ご依頼者の同僚から、勤務先会社の労働時間に関するお話を詳しく聴取し、その内容を書面にしました。
その上で、労働基準監督署に対して、弁護士名での意見書を提出し、ご依頼者の長時間労働の実態を詳細に伝えました。
これらの弁護活動の結果、ご依頼者には、無事に労災が認められました。また、後遺障害等級も、最も補償の手厚い第1級の認定を獲得することができました。
4 会社に対する損害賠償請求
労災が認定されたことを受けて、当方は、勤務先会社に対して、会社が安全配慮義務に違反したことを理由とする損害賠償請求を行いました。安全配慮義務違反の根拠は、会社がご依頼者に長時間労働を行わせていたことです。
しかし、勤務先会社は、弁護士を立てた上で、ご依頼者の脳出血について、就職の前に脳梗塞の病歴があったこと等を理由に、会社の責任を全面的に否定しました。また、ご依頼者の長時間労働も認めませんでした。
このため、勤務先会社との交渉は決裂し、会社に対して裁判を起こすことになりました(なお、極めて残念なことに、ご依頼者が裁判の終盤に肺炎で亡くなってしまわれたことから、最後はご遺族が引き継いでの裁判となりました)。
裁判の中で最も問題になったのは、ご依頼者に脳梗塞で2回の入院歴があったという点であり、これは当方にとって非常に不利な事情でした。
このことから、裁判所で、会社側の主張(脳出血を発症した原因が、ご依頼者の病歴にあるという主張)が認められ、損害賠償金が0円とされてしまうおそれは十分にありました。
これに対して、当方は、労働基準監督署が収集した1000枚以上の関係資料を入手し、その精査と分析を行いました。
その上で、裁判の中で、ご依頼者の過酷な長時間労働の実態を明らかにし、脳梗塞の病歴の有無にかかわらず、ご依頼者が、いつ脳出血を発症してもおかしくない労働状態にあったことを詳細に主張しました。
同時に、裁判所に対して、当事務所の協力医に作成してもらった医師意見書を提出し、勤務先会社での過重労働によって脳出血が発症したことの、医学的な裏付けも行いました。
これらの弁護活動の結果、裁判所から、勤務先会社の責任が、ご依頼者の病歴等の事情を上回るとする内容での和解案を出してもらうことができました。
これによって、最終的に、労災保険からの給付金とは別に、勤務先会社から4200万円の解決金の支払いを受けることによる和解が成立しました。
5 ご依頼の結果
労働基準監督署から労災認定(後遺障害等級1級)を獲得するとともに、労災保険からの給付金とは別に、勤務先会社から4200万円の支払いを受けることができました。
請求額から一定の減額を受けての和解ではありましたが、脳梗塞の入院歴という不利な事情があったことを考慮すれば、非常に高額な解決金であったと評価しています。
当事務所は、事件の大量処理を行うのではなく、一つ一つのご依頼に全力を挙げて取り組んでいます。
お悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。
