高難度事件 解決事例③

休憩時間を自車内で過ごしていた店員が、大雪で排気管が塞がりCO中毒により死亡、労基署は労災と認めない決定⇒再審査請求で逆転の労災認定を獲得した事件

1 ご依頼の内容

ご遺族から、労災と認めなかった労働基準監督署の決定に対する不服申立てをご依頼いただきました(本件は、他事務所の弁護士と共同受任し、当事務所の代表弁護士が主任弁護士を務めました)。

※ 本事件は、大雪という自然災害による労災事故であり、ご遺族に損害賠償請求のご希望はありませんでした。

2 事案の概要

亡くなられたご本人(10代男性)は、商業施設内の店舗で働く若い店員でした。

ご本人は、ある日の休憩時間中、商業施設の駐車場に停めた自車内で休んでいたところ、当日の大雪で車の排気管が塞がれ、車内に排気ガスが逆流したことにより、急性一酸化炭素中毒(CO中毒)で死去されました。

ご遺族は、ご本人が仕事が原因で亡くなったとして、ご自分たちで労災の請求(申請)を行いました。

しかし、労働基準監督署は、休憩時間中に職場の外で起きた事故であったことを理由に、労災を認めませんでした。このため、ご遺族は、労災の認定を求めて、当方にご相談に来られました。

このように、本件は、仕事場の外で休憩している際の大雪(自然災害)による事故であり、労働基準監督署も労災の不支給を決定しているという、弁護士にとって非常に高難度と言える事件でした。

3 労災の認定

当方が代理人となって、労災不支給に対する不服申立て(審査請求)を行いましたが、結論は変わりませんでした。

そのため、当方は、労働保険審査会に対して、労災不支給の決定を取り消し、労災の認定を求める再度の不服申立て(再審査請求)を行いました

労災が認められるためには、第一に、事故に遭遇した労働者が、事業主の支配下(=施設管理下)にあったことが必要です(この要件を「業務遂行性」といいます)。

このことについて、労働基準監督署は、ご本人が店舗を出て休憩に入った時点から、事業主の支配下を離れたとして、労災を不支給としていました。

ところが、当方が確認したところ、ご本人の勤務先は、商業施設に対して、従業員の駐車場使用料を支払っていることが判明しました。

駐車場の利用料金を支払っているのであれば、駐車場の管理権限もあることになりますから、ご本人は事故時、勤務先の支配下(=施設管理下)にあったと認められます。

このことから、当方は、労働基準監督署の決定は誤っており、ご本人は、事業主の支配下で事故に遭ったことを強く主張しました。

労災が認められるためには、第二に、問題となる負傷や死亡等が、業務に起因して発生したことが必要です(この要件を「業務起因性」といいます)。

このことについて、本件事故は、大雪という自然災害によるものであり、勤務中に職場内で発生したわけでもないことから、業務が原因ではないようにも思えます。

しかし、ご本人が自分の車で休んでいたのは、職場の休憩場所が、資材置き場と兼用の狭いスペースか、他の店舗と共用の混雑する休憩室の2か所しかなかったためでした。つまり、ご本人の業務においては、駐車場の自分の車の他に、休憩できる適切な場所が確保されていなかったということになります。

また、ご本人は、勤務先の店長から、車を駐車場の隅の場所に停めるよう業務上の指示を受けていました。これは、商業施設の来客用に、建物に近い便利な駐車場所を空けておくための指示だったのですが、結果的に、店長の指示した駐車場所で、本件事故が発生してしまったという事情もありました。

当方は、これらの事情を根拠として、ご本人の死亡が、業務に起因して発生したものであることを強く主張しました。

そして、当方は、以上の主張をまとめた弁護士名での意見書を提出し、労働保険審査会に対して、本件に労災が認められるべきであることを詳細に訴えました。

これらの弁護活動の結果、労働保険審査会は、労働基準監督署の判断が失当であることを認め、労災の不支給決定を取り消しました。

これにより、ご遺族は、労働基準監督署から改めて労災の認定を受け、労災保険から遺族補償年金を受給できることになりました。

なお、労働基準監督署の決定を取り消してもらうことは非常に難易度の高いことであり、本件で労災が認められたことは、新聞でも報道されました(北海道新聞)。

4 ご依頼の結果

再審査請求によって、労働基準監督署による労災の不支給決定が取り消され、労災の認定を獲得しました

労災の認定により、ご遺族は、労災保険から、遺族補償年金を受給できることになりました。ご依頼いただいた弁護士としても、非常に喜ばしい解決になったと受け止めています。

なお、本件は、大雪という自然災害の事故であったため、ご遺族に会社への損害賠償請求のご希望はなく、労災の認定によって事件終了となりました。 

当事務所は、事件の大量処理を行うのではなく、一つ一つのご依頼に全力を挙げて取り組んでいます

お悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。

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