労働災害とは?基礎知識と請求(申請)手続きの流れ

労災保険制度とは

労災保険制度は、労働災害(業務災害や通勤災害)による負傷、疾病、障害、死亡等に対して、保険給付を行う制度です。

労災保険の請求人は、原則として、被災された労働者ご本人か、そのご遺族です。

労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長宛てに、所定の請求書や添付書類を提出することによって請求します。

労災保険給付の種類と手続き

労災保険給付には、以下の種類があります。

なお、保険給付の名称については、業務災害の場合には「補償」が付きますが(○○補償給付)、通勤災害の場合は「補償」が付きません(○○給付)。

例えば、「療養(補償)給付」の場合、業務災害であれば「療養補償給付」、通勤災害であれば「療養給付」が名称です。

(1)療養(補償)給付

労働者が、業務や通勤が原因で負傷したり、病気にかかった場合に支給を受けることができます。

受給方法は、労働者が治療を受けた医療機関が、労災保険指定医療機関(以下「指定医療機関」といいます)であるか否かによって異なります。

指定医療機関で治療を受けた場合は、指定医療機関に所定の請求書(業務災害の場合は様式第5号/通勤災害の場合は様式第16号の3)を提出することにより、無料で治療を受けることができます。請求書は、医療機関を経由して、労働基準監督署長に提出されます。

指定医療機関以外で治療を受けた場合は、いったん労働者本人が治療費を支払った上で、労働基準監督署長に所定の請求書(業務災害の場合は様式第7号/通勤災害の場合は様式第16号の5)を提出することにより、負担した費用全額の支給を受けることができます。

具体的な手続きの流れは、下記の図をご覧ください。

17-1ケガや病気の治療を受けた場合給付手続き

(2)休業(補償)給付

労働者が、業務や通勤が原因となった傷病による療養のために、働くことができず、賃金を受けていないときに支給されます。

労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長に、所定の請求書(業務災害の場合は様式第8号/通勤災害の場合は様式第16号の6)を提出することにより請求します。休業開始4日目から、支給を受けることができます。   

具体的な手続きの流れは、下記の図をご覧ください。

休業(補償)給付の手続きの流れ

支給される金額は、休業1日につき、「給付基礎日額」の80%(=保険給付として60%+特別支給金として20%)です。

「給付基礎日額」とは、労災事故の直前3か月間分の賃金総額(ボーナスを除く)を暦日数で割った金額をいいます。簡単に言うと、賃金を日割り計算した日給のことです。

なお、労災保険からは、不足分の残り20%やボーナス分の支給を受けることはできません。

これらを受け取るためには、安全配慮義務の違反が認められる会社などに対して、損害賠償請求を行う必要があります(この場合には、制度上、不足分の20%を超えて、〔給付基礎日額の40%×休業日数〕を請求することができます)。

(3)障害(補償)給付

業務や通勤を原因とする傷病の治療を受けた結果、一定の後遺障害(後遺症)が残ってしまった労働者に対して、障害の程度(等級)に応じて支給されます。

労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長に、所定の請求書(業務災害の場合は様式第10号/通勤災害の場合は様式第16号の7)と、診断書等の添付書類を提出することにより請求します。

具体的な手続きの流れは、下記の図をご覧ください。

障害(補償)給付の手続きの流れ

請求を受けた労働基準監督署長は、請求者の方々の後遺障害が、後遺障害等級の第何級に該当するのか(またはどの等級にも該当しないのか)を認定します。

労災における後遺障害等級は、障害の程度に応じて、第1級から第14級に分類されています(第1級が最も重く、第14級が最も軽いです)。

このうち、第1級~第7級が認定された場合には、障害(補償)年金、障害特別年金、及び障害特別支給金が支払われます。

また、第8級~第14級が認定された場合には、障害(補償)一時金、障害特別一時金、及び障害特別支給金が支払われます。

  • どのような後遺障害(後遺症)に、何級の後遺障害等級が認定されるのか
  • 認定された後遺障害等級の、具体的な支給金額はいくらか

については、こちらをご覧ください。

(4)遺族(補償)給付

労働災害(業務災害や通勤災害)によって死亡した、労働者のご遺族に対して支給されます。

遺族(補償)給付には、①遺族(補償)年金と、②遺族(補償)一時金とがあります。

①遺族(補償)年金の受給資格者は、被災した労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄姉姉妹です(ただし、妻以外のご遺族については、一定の高齢または年少であるか、一定の障害の状態にあることが必要です)。

受給資格者のうちの最先順位者に対して、ご遺族の人数に応じた金額が支給されます。

労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長に、所定の請求書(業務災害の場合は様式第12号/通勤災害の場合は様式第16号の8)と、死亡診断書や戸籍謄本等の添付書類を提出することにより請求します。

②遺族(補償)一時金は、遺族(補償)年金を受け取ることのできるご遺族がいない場合などに、ご遺族の中の最先順位者に対して支給されます。

労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長に、所定の請求書(業務災害の場合は様式第15号/通勤災害の場合は様式第16号の9)と、死亡診断書や戸籍謄本等の添付書類を提出することにより請求します。

具体的な手続きの流れは、下記の図をご覧ください。

遺族(補償)給付の手続きの流れ

(5)葬祭料(葬祭給付)

労働災害(業務災害や通勤災害)によって死亡した、労働者の葬祭を行う方に対して支給されます。

労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長に、所定の請求書(業務災害の場合は様式第16号/通勤災害の場合は様式第16号の10)と、死亡診断書等の添付書類を提出することにより請求します。

葬祭料(葬祭給付)の請求は、通常、遺族(補償)給付の請求と同時に行われることが多いと思われます。

支給内容は、

  1. 31万5000円+給付基礎日額(=労災事故の直近3か月間の賃金総額を日割り計算した金額)の30日分
  2. ①の金額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は給付基礎日額の60日分

です。

(6)傷病(補償)給付

療養開始後、1年6か月を経過しても傷病が治ゆ(症状固定)しない、一定の重篤な傷病(=傷病等級の1級~3級に該当する傷病)を負った労働者に支給されます。

労働者ご本人の請求により支給されるのではなく、労働基準監督署長の決定(職権)に基づき支給されます。

他方、療養開始後1年6か月を経過した時点で傷病等級の1級~3級に該当しない場合は、休業(補償)給付が継続します。

(7)介護(補償)給付

極めて重大な後遺障害を負ってしまった労働者に対する、介護に関する給付です。

労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署長に、所定の請求書(様式第16号の2の2)と、診断書等の添付書類を提出することにより請求します。

障害(補償)年金または傷病(補償)年金の受給者のうち、障害等級・傷病等級が第1級の方(すべて)と、第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有している労働者が、現に介護を受けている場合に支給されます。

(8)二次健康診断等給付

労働安全衛生法に基づく直近の定期健康診断などで、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見があると診断された場合に、労災病院または都道府県労働局長が指定する病院などで、自己負担なしで受けることができます。

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