労働災害によるお怪我やご病気で治療を続けていると、いずれ主治医の先生から「症状固定」との診断を受け、治療を終える時期がやって来ます。
症状固定とは、完治に至らなくても、傷病の状態が安定し、治療してもこれ以上の改善が見込めない状態のことを言います。
症状固定後に、身体に残ってしまった障害を後遺障害と言います。
「障害(補償)給付」の請求を行う必要があります。
労働者の勤務先(事業場)を管轄する労働基準監督署に、所定の請求書(業務災害の場合は様式第10号/通勤災害の場合は様式第16号の7)と、診断書等の添付書類を提出することにより請求します。
残念ながら、そうではありません。
労災保険の障害(補償)給付を受けるためには、当該後遺障害が、労災保険の定める後遺障害等級のいずれかに該当すると認定される必要があります。
労災保険の後遺障害等級は、後遺障害の重さに応じて、第1級から第14級に分かれています(第1級が最も重く、第14級が最も軽いです)。
支給される金額は、認定された等級の重さに応じて決まりますので、後遺障害に対する適切な補償を受けるためには、後遺障害の等級を正しく認定してもらうことが重要です。
認定された後遺障害等級の変更を求めるための方法としては、
- 審査請求(労働者災害補償保険審査官に対する不服申立て)
- 再審査請求(労働保険審査会に対する不服申立て)
- 行政訴訟(裁判所に対して、労基署長の決定の取消を求める訴訟)
という3つの制度が用意されています。
ただし、一度決まった後遺障害等級を変更させることは簡単ではありません。希望する結果を得るためには、労災を請求する段階にも増して、根拠に基づいた説得力のある主張を行うことが肝要です。
以下の期間内に手続きを行わなければなりません(期間が短いですので、早期の行動が必要です)。
① 審査請求
労働基準監督署長の決定があったことを知った日(=通常は、決定を受け取った日)の翌日から起算して3か月以内に行う必要があります。
② 再審査請求
審査請求が認められなかった場合に行うことができます。
再審査請求を行うことができる期間は、審査請求の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内です。
③ 行政訴訟
行政訴訟は、1)審査請求が認められなかった場合か、2)再審査請求が認められなかった場合のいずれかに行います。
1)審査請求が認められなかった場合
再審査請求を行わない場合には、審査請求の決定があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内
2)再審査請求が認められなかった場合
再審査請求の裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内
に、裁判所に提訴しなければなりません(また、決定・裁決の日から1年以内に行う必要があります)。
労災の手続きで認定された後遺障害の等級は、賠償金額に大きな影響を及ぼします。
これは、認定された後遺障害等級が重ければ重いほど、認められる賠償金の目安額が上昇するためです。
会社から適切な損害賠償金を支払ってもらうためにも、労災の手続きの中で、後遺障害等級を正しく認定してもらうことが重要です。
再就職をしたことによって、損害賠償を請求できなくなることはありません。
会社が安全配慮義務に違反したために労災事故に遭ってしまった労働者の方々は、再就職をした後であっても、前の会社に対して、損害の賠償を請求することができます。