労災の後遺障害等級認定について

1 労災の請求(申請)

労働災害によるお怪我やご病気の治療を終えたものの、後遺障害(後遺症)が残ってしまった方々は、労働基準監督署に、労災保険の「障害(補償)給付」を請求することができます。

労働基準監督署は、障害等級の認定基準に基づき、被害者の方々の後遺障害(後遺症)が、後遺障害等級の第何級に該当するのか(またはどの等級にも該当しないのか)を認定します。

労災における後遺障害等級は、障害の程度に応じて、第1級から第14級に分類されています(第1級が最も重く、第14級が最も軽いです)。

このうち、第1級~第7級が認定された場合には、障害(補償)等年金、障害特別支給金、障害特別年金が支払われます。支給される金額は、認定された等級の重さに応じて決まります。

また、第8級~第14級が認定された場合には、障害(補償)等一時金、障害特別支給金、障害特別一時金が支払われます。この場合も、支給される金額は、認定された等級の重さに応じて決まります。

このページでは、

  • どのような後遺障害(後遺症)に、第何級の後遺障害等級が認定されるのか
  • 認定された後遺障害等級の、具体的な支給金額はいくらか

についてご説明します。

2 どのような後遺障害(後遺症)に、第何級の後遺障害等級が認定されるのか

労災において後遺障害等級が定められている後遺障害は、

に大別されます。

どのような後遺障害(後遺症)に、第何級の後遺障害等級が認定されるのかは、以下のとおりです。

上肢の後遺障害

① 欠損障害

両上肢をひじ関節以上で失ったもの 第1級
両上肢を手関節以上で失ったもの 第2級
1上肢をひじ関節以上で失ったもの 第4級
1上肢を手関節以上で失ったもの 第5級

② 機能障害

両上肢の用を全廃したもの 第1級
1上肢の用を全廃したもの 第5級
1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 第6級
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 第8級
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 第10級
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 第12級

③ 変形障害

1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 第7級
1上肢に偽関節を残すもの 第8級
長管骨に変形を残すもの 第12級

④ 醜状障害

上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 第14級

手指の後遺障害

① 欠損障害

両手の手指の全部を失ったもの 第3級
1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの 第6級
1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの 第7級
1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの 第8級
1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの 第9級
1手の示指、中指又は環指を失ったもの 第11級
1手の小指を失ったもの 第12級
1手の母指の指骨の一部を失ったもの 第13級
1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 第14級

② 機能障害

両手の手指の全部の用を廃したもの 第4級
1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの 第7級
1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの 第8級
1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの 第9級
1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの 第10級
1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの 第12級
1手の小指の用を廃したもの 第13級
1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 第14級

下肢の後遺障害

① 欠損障害

両下肢をひざ関節以上で失ったもの 第1級
両下肢を足関節以上で失ったもの 第2級
1下肢をひざ関節以上で失ったもの 第4級
両足をリスフラン関節以上で失ったもの 第4級
1下肢を足関節以上で失ったもの 第5級
1足をリスフラン関節以上で失ったもの 第7級

② 機能障害

両下肢の用を全廃したもの 第1級
1下肢の用を全廃したもの 第5級
1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 第6級
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 第8級
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 第10級
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 第12級

③ 変形障害

1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 第7級
1下肢に偽関節を残すもの 第8級
長管骨に変形を残すもの 第12級

④ 短縮障害

1下肢を5センチメートル以上短縮したもの 第8級
1下肢を3センチメートル以上短縮したもの 第10級
1下肢を1センチメートル以上短縮したもの 第13級

⑤ 醜状障害

下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 第14級

足指の後遺障害

① 欠損障害

両足の足指の全部を失ったもの 第5級
1足の足指の全部を失ったもの 第8級
1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの 第9級
1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの 第10級
1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの 第12級
1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの 第13級

② 機能障害

両足の足指の全部の用を廃したもの 第7級
1足の足指の全部の用を廃したもの 第9級
1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの 第11級
1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの 第12級
1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの 第13級
1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの 第14級

神経系統の機能又は精神の後遺障害

① 神経系統又は精神の障害

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 第1級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 第2級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 第3級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 第5級
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 第7級
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 第9級

② 局部の神経系統の障害

局部にがん固な神経症状を残すもの 第12級
局部に神経症状を残すもの 第14級

せき柱及びその他の体幹骨の後遺障害

① せき柱の変形障害

せき柱に著しい変形を残すもの 第6級
せき柱に変形を残すもの 第11級

② せき柱の運動障害

せき柱に著しい運動障害を残すもの 第6級
せき柱に運動障害を残すもの 第8級

③ その他の体幹骨の変形障害

鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 第12級

胸腹部臓器(生殖器を含む)の障害

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 第1級
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 第2級
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 第3級
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 第5級
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 第7級
両側のこう丸を失ったもの 第7級
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 第9級
生殖器に著しい障害を残すもの 第9級
胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの 第11級
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 第13級

眼(眼球)の後遺障害

① 視力障害

両眼が失明したもの 第1級
1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 第2級
両眼の視力が0.02以下になったもの 第2級
1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの 第3級
両眼の視力が0.06以下になったもの 第4級
1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの 第5級
両眼の視力が0.1以下になったもの 第6級
1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの 第7級
1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの 第8級
両眼の視力が0.6以下になったもの 第9級
1眼の視力が0.06以下になったもの 第9級
1眼の視力が0.1以下になったもの 第10級
1眼の視力が0.6以下になったもの 第13級

② 調節機能障害

両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの 第11級
1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの 第12級

③ 運動障害

正面視で複視を残すもの 第10級
両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの 第11級
1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの 第12級
正面視以外で複視を残すもの 第13級

④ 視野障害

両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 第9級
1眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 第13級

まぶたの後遺障害

① 欠損障害

両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 第9級
1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 第11級
両眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの 第13級
1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの 第14級

② 運動障害

両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 第11級
1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 第12級

耳の後遺障害

① 両耳の聴力障害

両耳の聴力を全く失ったもの 第4級
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 第6級
1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第6級
両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの 第7級
1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第7級
両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第9級
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 第9級
両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 第10級
両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 第11級

② 一耳の聴力障害

1耳の聴力を全く失ったもの 第9級
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 第10級
1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 第11級
1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 第14級

③ 耳かく(耳介)の欠損障害

1耳の耳かく(耳介)の大部分を欠損したもの 第12級

口の後遺障害

① そしゃく及び言語の機能障害

そしゃく及び言語の機能を廃したもの 第1級
そしゃく又は言語の機能を廃したもの 第3級
そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの 第4級
そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの 第6級
そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの 第9級
そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの 第10級

② 歯牙の障害

14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第10級
10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第11級
7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第12級
5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第13級
3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 第14級

鼻の後遺障害

鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 第9級

外貌の醜状障害

① 外貌の醜状障害

外貌に著しい醜状を残すもの 第7級
外貌に相当程度の醜状を残すもの 第9級
外貌に醜状を残すもの 第12級

② 上肢・下肢の醜状障害

上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 第14級
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 第14級

3 認定された後遺障害等級の、具体的な支給金額はいくらか

以下の表のとおり、

  1. 第1級~第7級が認定された場合には、障害(補償)等年金、障害特別支給金、障害特別年金が支払われます。
  2. 第8級~第14級が認定された場合には、障害(補償)等一時金、障害特別支給金、障害特別一時金が支払われます。
労災の後遺障害等級認定について:給付一覧表

※ 「給付基礎日額」とは、労災事故の直前3か月間分の賃金総額(ボーナスを除きます)を暦日数で割った金額をいいます。簡単に言うと、賃金を日割り計算した日給のことです。

※ 「算定基礎日額」とは、労災事故の直前1年間に支払われた特別給与(いわゆるボーナス)を365日で割った金額をいいます。

※ 年金は、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期に、それぞれの前2か月分が支払われます。

※ 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。

なお、それぞれの後遺障害等級が認定された場合の、後遺障害慰謝料の目安(相場)については、こちら(「労災の慰謝料相場について」)をご覧ください。

4 ご相談をご検討されている皆さまへ

労災の後遺障害等級の認定基準は上述のとおりですが、内容が複雑で、専門的な知識がなければ判断のつかない場合が多くあります。

後遺障害についてお悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。

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