仕事中の事故で後遺障害(後遺症)が残ってしまったら

1 仕事中の事故で後遺障害(後遺症)が残ってしまったら

仕事中(勤務中・通勤中)の労災事故による怪我や病気で治療を続けていると、いずれ主治医の先生の判断によって、ひとまずの治療を終える時期がやって来ます。

しかし、治療が終了しても身体が元に戻らず、後遺障害(後遺症)が残ってしまった場合には、ご自身やご家族の生活を守る上でも、適切な補償を受け取ることが必要不可欠であるはずです。

このような場合に、後遺障害に対する正当な補償を受けるための方法としては、大きく、

  • 労災の「障害(補償)給付」の請求(申請)
  • 会社に対する損害賠償請求

の2つが考えられます。

このページでは、それぞれの方法の内容について、詳しくご説明していきます。

2 労災の「障害(補償)給付」の請求(申請)

(1)「症状固定」(治療終了)と言われたら

労災事故による治療を続けていると、いずれ主治医の先生から「症状固定」との診断を受け、ひとまずの治療を終える時期がやって来ます。

「症状固定」とは、完治に至らなくても、傷病の状態が安定し、治療してもこれ以上の改善が見込めない状態のことをいいます。

主治医の先生から「症状固定」と診断されたときに、身体に一定の後遺障害(後遺症)が残ってしまっている方々は、そのことに対する補償として、所轄の労働基準監督署に、労災保険の「障害(補償)給付」の請求を行うことができます

後遺障害の種類は極めて多様ですが、例としては、身体の一部の欠損、機能の喪失や低下、麻痺や痛みの残存、関節可動域の制限などが挙げられます。

なお、労災保険では、「症状固定」について「治ゆ」という用語が用いられます。しかし、傷病が完治に至らなかった場合に「治ゆ」という言葉を使うことには違和感があり、一般的に、後遺障害が残る場合は「治ゆ」のことを「症状固定」と呼ぶことが多いです。

(2)後遺障害等級とは

労災保険の「障害(補償)給付」の請求を受けた労働基準監督署は、障害等級の認定基準に基づき、被害者の方々の後遺障害(後遺症)が、後遺障害等級の第何級に該当するのか(またはどの等級にも該当しないのか)を認定します。

労災において後遺障害等級が定められている後遺障害は、次の①~⑬に大別されます。

  1. 上肢の後遺障害
  2. 手指の後遺障害
  3. 下肢の後遺障害
  4. 足指の後遺障害
  5. 神経系統の機能又は精神の後遺障害
  6. せき柱及びその他の体幹骨の後遺障害
  7. 胸腹部臓器(生殖器を含む)の障害
  8. 眼(眼球)の後遺障害
  9. まぶたの後遺障害
  10. 耳の後遺障害
  11. 口の後遺障害
  12. 鼻の後遺障害
  13. 外貌の醜状障害

労災の後遺障害等級は、①~⑬の後遺障害の重さに応じて、第1級から第14級に分かれています(第1級が最も重く、第14級が最も軽いです)。

このうち、第1級~第7級が認定された場合には、障害(補償)等年金、障害特別支給金、障害特別年金が支払われます。支給される金額は、認定された等級の重さに応じて決まります。

また、第8級~第14級が認定された場合には、障害(補償)等一時金、障害特別支給金、障害特別一時金が支払われます。この場合も、支給される金額は、認定された等級の重さに応じて決まります。

どのような後遺障害が、どの後遺障害等級に該当するかについては、別ページの「労災の後遺障害等級認定について」をご覧ください。

(3)なぜ等級の認定が重要なのか

労災の後遺障害等級は、上述のとおり、後遺障害の重さに応じて、第1級から第14級に分かれています(第1級が最も重く、第14級が最も軽いです)。

そして、後遺障害等級は、認定された等級が1級違うだけで、労災保険から受け取れる補償額に大きな違いが生じます。

のみならず、会社に対して損害賠償を請求する場合においても、労災手続きで認定された後遺障害の等級は、賠償額に大きな影響を及ぼします。

そのため、労災保険や会社から適切な補償額を支払ってもらうためには、労災保険の「障害(補償)給付」の請求手続きの中で、自身の負ってしまった後遺障害(後遺症)について、正しい後遺障害等級を認定してもらうことが極めて重要です

(4)正しい等級認定を受けるために

労災保険の「障害(補償)給付」の請求は、労働基準監督署に、所定の請求書(業務災害の場合は様式第10号/通勤災害の場合は様式第16号の7)を提出することによって行います。

労働基準監督署に提出する請求書には、主治医の先生に作成してもらった「診断書(障害(補償)等給付請求用)」を添付します。

そして、この診断書は、正しい後遺障害等級の認定を受ける上で、非常に重要な役割を果たします。労働基準監督署は、この診断書を根拠にして、被害者の方々の後遺障害(後遺症)が、第何級に該当するかの認定を行うためです。

注意しなければならないのは、診断書を作成していただく医師の先生方は、多数の患者の治療のために多忙であることが多く、また、労働基準監督署における労災認定の細かな手続きについても、必ずしも精通しているわけではないということです。

主治医の先生に診断書をご作成いただいても、もし診断書の記載に不備や不足があったり、不正確な記述や誤解を招く記述があったりすると、正しい後遺障害等級の認定を受けられなくなる恐れが生じます。

このため、この診断書を、遅くとも労働基準監督署に提出する前に、労働災害に詳しい弁護士に確認してもらうことは、不当に低い後遺障害等級が認定されてしまう事態を、未然に防ぐことに役立ちます

これらのことから、労働基準監督署に労災を請求するに当たって、労災事故に強い弁護士に、事前に相談または依頼をするメリットは大きいと言えます。

労災請求に関してお悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。

3 会社に対する損害賠償請求

(1)労災保険からは、被害全額の補償は受けられない

無事に後遺障害等級の適切な認定を受けられた場合でも、重要であるのは、労災保険からは、被害の全額についての補償を受け取ることはできない、ということです。

例えば、労災保険からは、休職したことによる減収について、全額の補償を受け取ることはできません。

そして何よりも、労災保険の最も大きな不足は、慰謝料が全く支給されないことです。

労災事故によって、重い後遺障害(後遺症)を負ってしまった場合に、極めて大きな精神的苦痛が発生することは当然です。

にもかかわらず、労災保険からは、どれだけ重い後遺障害を負ってしまった場合でも、その精神的苦痛の賠償(慰謝料)を受け取ることはできないのです。

しかし、労災で後遺障害等級を認定された被害者の方々に認められる損害賠償金は、その中の慰謝料の金額だけでも、後遺障害等級の重さに応じて、110万円(第14級)~2800万円(第1級)が一つの相場とされています。 

(2)会社の損害賠償責任

労災保険から支給を受けられない損害(=慰謝料、補償されない減収額、逸失利益等その他の不足額)については、会社に対して補償を求めることが考えられます。

というのも、会社は、労働者に対して「安全配慮義務」(=労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ働くことができるよう必要な配慮をすべき義務)を負っています。

このことから、会社が安全配慮義務に違反したために労災事故に遭ってしまった労働者の方々は、会社に対して損害の賠償を請求することができるのです。

会社の安全配慮義務の違反は、a)業務に対する安全対策の不備、b)設備や備品に対する安全防止装置の不存在、c)従業員に対する指導や教育の不徹底、d)安全な作業計画や作業手順の不制定、e)長時間労働やハラスメントの放置など、様々な場合に認められています。

にもかかわらず、労災事故の被害に遭われた方々の中には、労災の請求(申請)は行っていても、不足分の補償を受け取るために、会社に対して損害賠償を請求する方法が考えられるということを、ご存知ないという方々が多くいらっしゃいます

このことは、労災保険からの支給だけでは、被害の一部に対する補償しか受け取れていないにもかかわらず、そのことに気付かないまま、労災事故の問題を終わらせてしまっている方が多くいらっしゃることを意味します。

当事務所は、そのような理不尽がまかり通ることのないよう、本サイト等によって問題の周知に努めるとともに、依頼者様が正当な補償を受け取ることができるように全力を尽くします。

労災事故に関してお悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。

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