1 通勤災害とは
労災保険の給付を受けるためには、被災した労働者の負傷や死亡などが、業務上または通勤によって生じたことが必要です。
このうち、労働者の「業務上」の負傷、疾病、障害または死亡のことを「業務災害」といいます。仕事中に発生した事故であれば、通常は業務災害に該当します。
他方、労働者の「通勤」による負傷、疾病、障害または死亡のことを「通勤災害」といいます。
この「通勤」とは、労働者が、就業に関し、次の①~③に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます(ただし、このうち業務の性質を有するものは「業務災害」になりますので、「通勤災害」からは除かれます)。
- 住居と就業の場所との間の往復
- 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
- 上記①に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限ります。)
「通勤災害」の典型例は、住居から就業場所への出勤途中や、就業場所から住居への帰宅途中における事故です。
この他、「就業の場所から他の就業の場所への移動」(上記②)とは、いわゆる掛け持ち勤務の労働者が、1つ目の就業場所での勤務が終了した後に、次の就業の場所へ向かう場合の移動をいいます。
また、「上記①に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動」(上記③)は、帰省先住居と赴任先住居の間の移動などが該当します。
2 通勤災害と業務災害の違い
通勤災害と認められた場合には、労災保険から、基本的に業務災害と同様の給付を受けることができます。
ただし、保険給付の名称については、業務災害の場合には「補償」が付きますが(○○補償給付)、通勤災害の場合は「補償」が付かない(○○給付)という違いがあります。
例えば「障害(補償)給付」の場合、業務災害であれば「障害補償給付」、通勤災害であれば「障害給付」が名称です。
また、通勤災害は、業務災害と比較して、療養休業中に解雇されてしまうことへの保護が弱いことに注意が必要です。
業務災害の場合、使用者は、原則として、負傷や疾病のために療養休業している労働者を解雇することができません(解雇を行いたい使用者は、療養の開始から3年を経過しても治らない場合に、当該労働者の平均賃金の1200日分の打切補償を支払う等の、厳しい例外要件を満たす必要があります)。
これに対して、通勤災害の場合には、業務災害のような上記の解雇制限がありません。
もちろん、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、解雇権を濫用したものとして無効になりますので、通勤災害の場合であっても、使用者による自由な解雇は許されません。
とはいえ、業務災害の方が、通勤災害よりも、解雇される危険からの保護が手厚いため、可能な限り、業務災害の認定を受ける方が望ましいと言えます。
3 ご相談をご検討されている皆さまへ
業務災害であるか通勤災害であるかに関わらず、被災した労働者の方々が、適切な補償を受け取るべきであることは当然です。
当事務所は、通勤災害の被害に遭われた皆さまが、正当な補償を受けられるよう全力を尽くします。
なお、通勤災害で最も多いのが、交通事故による被害です。
通勤中や仕事中に交通事故に遇ってしまった場合の詳細は、別ページの「労災事故 事故状況別:仕事中・通勤中の交通事故」で解説しておりますので、ご一読いただけますと幸いです。
お悩みの方や、弁護士に訊いてみたいことがあるという方は、ぜひ一度、当事務所にご相談なさってみてください。